先日、知人のお父さまの話で笑わせていただきました。(声を出して笑うのはとても健康に良いことですから、ありがたい。)そのお父さまはお酒が好きでよく飲まれるわけなんですが、ご体調には弊害も出ていて、かかりつけ医からもうお酒は飲んじゃいけない、と注意された。なんだかムカついてかかりつけ医を変更されたお父さま、次のかかりつけ医は飲み過ぎなかったら大丈夫と言ってくれた。とても良い先生だった。とおっしゃっていたそう。
知人曰く、「酒を飲むなという先生は『悪い医者』、飲んでもいいという先生は『良い医者』なんですよー。」その場に居合わせたみんなで大笑い。わたくしは自分が飲まないせいか飲酒に厳しく、「悪い医者だわー。」と嘆いていたところでした。でもこのお父さま、確かに依存症の診断基準のひとつ、「明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず、依然として物質を使用する。」に相当し、「依存」の入り口にいらっしゃるのは否定できない。こんなこと言って脅かすなんて、まさしく『悪い医者』ですよね。
医師の評判でよく取り沙汰されるのは、他には処方薬の多寡でしょうか。わたくしが以前勤めていた精神病院では一時期かなり経営状態が悪くなってしまって、その数年間、年に一度、それぞれの医師が稼いでいる「売り上げ」つまり診療報酬を明示され、理事長からハッパをかけられるという面談がございました。病院の体制の変化によって出来高払いの年度と包括払いの年度があったんですが、わたくし、出来高払いの年は最下位で叱られ、包括払いの年はトップで褒めていただきました。これって年度に関わらず、処方している薬やオーダーした検査がいつもただ少なかっただけなんですけど。
ご高齢のかたのお薬手帳をときどき見せていただきますが、たとえば生活習慣病に関してでも降圧薬だけで2剤以上、それに加えて脂質異常治療薬、抗血栓薬、鎮痛剤や胃薬等いろいろ含めると7、8剤以上処方されているかたが少なくありません。ご家族がこんなにたくさん服用していて大丈夫かとご心配になっているわりには、ご当人はあまり怖がっていらっしゃらないというか、お薬たくさんもらって安心なさってる。お薬あまり出さないで、体重減らしなさい、運動しなさい、お酒やめなさいとかいう医師はちょっと煙たいのかもしれません。誰かの、誰かによる、誰かのための『良い医者』『悪い医者』なかなか悩ましい。